「旅なんて、ごくつぶしだよ。」

先輩である不良旅人ライターＴさんはいつもそう言っていました。

「ただ旅をするだけだろ。」

どうして旅に出たのか？　と聞かれても、私には明確には答えられない。少なくとも言えることは、あのとき、旅に出るということ以外には、もう考えもしなかった、ということです。

そりゃあね、英語を話せるようになったらいいなとか、外国人と友達になりたいなとか、そんなことは人並みに思っていました。けど、そんなことってどうでもよくって、もう、とにかく早く自分の町を出たかった。自分の知らない世界、自分のことを誰も知らない世界に、行きたくて行きたくてしょうがなかった。

そして、日本を出て、旅人になって、何かが変わったのか？といえば、よくわからない。
英語もなんとか話せるようになったし、外国人の友達もできたし、外国のニュースや歴史などに興味をもつようになったし、日本っていう国を客観的に見るようになったし、多分いろいろな小さなことにこだわらなくなった気がするし、なんてね。

けれど、その時間を日本で過ごしていたとしても、何かが変わって、大人になっていたはずだと思うと、どっちにしても人は多少は変わっていくんじゃないかって思う。別に旅なんかしなくたってね。ただ、旅の中で面白いことをいっぱい見つけて、そうして、その面白いことをかき集めてみて、今、日本で仕事をしているので、今の自分は旅をしたからいるっていうのは間違いはありません。

それにしても、あの旅はなんだったんだろう？なんて考えると、また聞こえてきます。

「ごくつぶしだ！」

「旅人文化」というのが、あるかどうかは、わからない。わからないが、「旅人文化」という言葉をおいてみると、ありそう気がする。「旅人文化」を考えることで、なにか発見や可能性があるかも知れない。 （旅人たちの談話序文より）

ということで、日本でこつこつお仕事しながら、次に旅に出る日を夢見て、旅の話をしてみよう！なんて思っちゃいました。

やどや代表　山本真梨子