はじめまして、ysといいます。ひょんなきっかけからこのサイト「旅人文化」に寄稿することになりました。外国(アメリカ)に5年ほど滞在していた経験から、「旅人文化」について何か言えることや書けることもあるかもしれないという考えで書くことを決めました。

とある記憶のかけら

この間ある日本人の友達と久しぶりに再会して飲みに行きました。彼とはアメリカで知り合いました。そのときアメリカ時代に私達が滞在していた地元の話になりました。

そこには地元の人以外には無名だけれども、景色や雰囲気がよくて私がよく行っていた所がいくつもありました。その中の一つにメモリアルパークという名の公園がありました。

その公園はダウンタウンに程近いところにあって、近くの丘から流れてくる小川を源流とするごく浅い水路に沿うような格好で造られたもので、水路の周りには芝生が敷き詰められ、その敷地内には幾つもの若木の記念樹が植えられ、その小高い一角にはチャペルが建てられていて、休日は家族連れやカップル、犬の散歩に来た人やウェディングドレス姿で記念写真を撮影される新婦などでいつも賑わっていました。それ以外にも、メモリアルパークの名が示すとおり、戦争で亡くなった兵士たちの墓標や慰霊碑などが設けられていました。

先ほど賑わっていた、と書きましたが、実際にはいつもとても静かでした。人は結構いて、めいめいが自分の好きなことをやっていました。芝生に寝転がって本を読んでいたり、フリスビーを投げて犬にキャッチさせたり、キャンプ用の椅子やテーブルを置いてバーベキューやったり…。一見てんでばらばらのようで、小高いチャペルの丘からそんな光景を見下ろすと、まるで統一と均整の取れた一枚の絵画のように見えるのが不思議でした。

チャペルの丘の敷地には戦死した兵士たちの墓標があり、それは一枚の大きな墓碑銘のプレートをぐるりと取り囲むようにして並べられていました。私はその墓碑銘に記されたレクイエムにとても感銘を受けて、持っていたデジカメに収めました。メモリーをパソコンにアップロードする前にそのデジカメを無くしてしまったのは今でも悔やまれます。

もちろんそれは英語で書かれていました。正確に覚えてはいないのですが、”When all the sadness forgotten, the purpose of life becomes clear.” というくだりがあって、その前後の文脈と合わせて自分の心に飛び込んできたのを、今でもよく憶えています。

何だったかな、と思います。本当に全文暗誦してもいいくらい私にとっては素晴らしい文章で、お金と時間があったらまたそこに戻って確かめてみたいと本当に思っています。私にとってはそれくらい価値のある記憶のひとかけらでした。

up date: 2008/08/13

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